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Ⅵ 金属アレルギーの予防法

金属アレルギーの予防法

金属アレルギーの予防法

金属アレルギーは一度生じてしまうと、なかなか治りにくい病気です。ひどい場合、20年ないし30年、悪くすると一生続くほど悩まされることもあります。それは金属アレルギーのきっかけ(感作)となる金属が、私たちの日常生活に当たり前のように多く存在しているからです。アクセサリー、腕時計、お金、日用雑貨や生活用品であるお鍋などの誰が見ても金属に見えるものから、歯の治療に用いられる歯科金属や消毒液、皮革などの気づきにくい物にも金属は広く存在しています。また食べ物にも気をつけないといけません。チョコレートには亜鉛、豆類にはニッケルが多く含まれています。つまり超微量でアレルギーを誘発させる金属の供給源にはこと欠かないからです。若い女性のピアスは、ニッケルや金のアレルギーを生じさせるきっかけとなるため、避けた方がいいでしょう。どうしてもするならば、貴金属やメッキされていないものにするべきでしょう。

ここでは歯科医療の観点から、金属アレルギーの予防法についてお伝えします。

歯科的見地からの金属アレルギー予防法

予防法1:アレルギーを起こしやすい歯科金属に注意する

予防法1:アレルギーを起こしやすい歯科金属に注意する

金属の中にもアレルギーを起こしやすい金属と起こしにくい金属があります。お口の中に用いられる歯科金属の中でも、銀はアレルギー感作を比較的起こしにくいです。一方水銀、ニッケル、コバルト、クロム、スズは注意が必要な金属であり、必要がなければ出来たら接触は避けた方がいい金属です。アトピー性体質の方は特に注意が必要です。

予防法2:異種金属や非貴金属の使用を避ける

予防法2:異種金属や非貴金属の使用を避ける

アルミホイルの包み紙、金属製のスプーンをかんでピリッとしたり、キーンと感じた経験はありませんか?これはガルバニー電流と言われるものです。ガルバニー電流は、通常は異なる種類の金属が触れ合うことで発生します。

お口の中には唾液や食べ物などの電解質があるため、電気の伝導性が高まっています。すると異種金属間で電池を形成して、生体と金属の間でも微弱な電流が生じています。特に電位差が大きくなる非金属と貴金属が、お口の中に存在するような場合には問題となります。ガルバニー電流は、金属を腐蝕させ、金属の溶出量が増大させ、金属感作やアレルギーの発症の機会を増やすことになるからです。またガルバニー電流の影響で、銀歯と歯を合着させているセメントが溶け出してしまい、銀歯と歯の間に空間ができることで、食べ物のカスや菌が入り込み、むし歯を引き起こします。

出来るだけガルバニー電流を発生させないためにも、お口の中の金属は出来るだけ同種同系統の歯科金属を使用して治療した方が良いでしょう。さらに言うなら、お口の中は唾液で電気の伝導性が高いため、一種類の歯の金属だけでもガルバニー電流を発生させてしまうこともあります。そのため金属を使用しないメタルフリー治療にしたら、より一層安心です。

予防法3:適合性が良く、きれいに研磨された補綴物を入れる

予防法3:適合性が良く、きれいに研磨された補綴物を入れる

差し歯やクラウン、ブリッジの銀歯のことを補綴物といいます。歯にぴったり合っていない不適合な補綴物だと、食事の食べ残しなどの汚れが停滞しやすくなります。するとその周囲の歯肉は常に炎症を起こし、金属イオンを体内に取り込みやすい状態になります。さらによく研磨されていない補綴物だと一層腐蝕しやすいため、金属アレルギーのリスクが高まります。

歯にぴったり合った適合の良い補綴物だと、唾液による洗浄作用阻害されず、歯肉に炎症は見られません。歯肉からの浸出液の流れも淀みありません。そのため歯科金属の溶出、体内への取り込み吸収もなく、清潔な状態を保てます。

予防法4:口腔衛生の向上

予防法4:口腔衛生の向上

唾液は本来ややアルカリ性です。それが口腔清掃がよく行われていないと、ただちに細菌によって酸が産生され、お口の中の歯科金属の腐蝕量は増加します。つまりお口の中が不潔だと、金属イオンが溶け出し、金属アレルギーのリスクが高まります。金属製の差し歯はもちろん、自分自身の歯のプラークコントロールが重要です。

予防法5:メタルフリー治療の応用

予防法5:メタルフリー治療の応用

メタルフリー治療とは文字通り「金属を使わない」治療のことです。通常歯科治療においては、修復物に金属が用いられることが多く、それが金属アレルギーを引き起こすことがあります。メタルフリー治療では、金属以外の材質で治療していきます。金属を全く使用しないため、過去に金属によるアレルギー症状があった人には非常に有効な治療法です。もちろん現在金属アレルギーがない人でもいずれアレルギーを引き起こす可能性はありますので、アレルギー症状を予防できることは大きな利点といえます。

治療には、セラミックス(陶材)、ハイブリットセラミックス(超硬質レジン)やレジン(プラスティック)系材料などが主に使われます。また土台の部分には、グラスファイバー(線維)とレジンを用いたファイバーポストレジンコアを使用していきます。これは重要なことであり、表面だけメタルフリーにしても支台築造(土台)が金属では意味がないからです。

特にメタルフリー治療の代名詞とも言えるセラミックスは、天然歯のような透明感と金属にも勝る硬さを持ち、生体適合性のよい材料です。これらのメタルフリー材料は審美的に優れているだけではなく、金属アレルギーを予防できるという利点から治療応用範囲が広がっています。

金属アレルギーを予防するには

金属アレルギーについて確実な予防法というものはありませんが、日常生活において以下のことに注意すれば、リスクを低減することができます。

  • ネックレスなどの金属製品でかぶれた経験がある場合には、できるだけ金属を身につけないでください。
  • むし歯治療においては、初期であれば金属を使用しないこともできます。もしすすめられても、できるかぎり入れないようにしましょう。
  • 口腔内が汚れていると、金属は溶けやすくなります。まめにブラッシングし、きれいな状態を保ちましょう。
  • 喫煙習慣や慢性扁桃炎のある方は、うがいや禁煙も効果的です。

 

Ⅴ 金属アレルギーの治療法

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参考文献

※本サイトの構築にあたり、下記の文献・書籍を参考にしています。

  • 『Dr.菊池の金属アレルギー診断室』東京堂出版。
  • 『GPのための金属アレルギー臨床』デンタルダイヤモンド社。
  • 『金属アレルギーとメタルフリー治療Q&A』医学情報社。
  • 『歯科と金属アレルギー』デンタルダイヤモンド社。
  • 『Visual Dermatology Vol.10 No.11,Vol.10 No.12,Vol.12 No.4』学研メディカル秀潤社。
  • 『皮膚科サブスペシャリティーシリーズ 1冊でわかる皮膚アレルギー』文光堂。
  • 『アトピー性皮膚炎: 正しい治療がわかる本』法研。
  • 『見分けて治そう! 歯科金属・材料アレルギー』クインテッセンス出版。